可愛的?人30

可愛的?人30

ソウルにくらべて、高麗は夕暮れがはやくやってくる気がする。

うんしゅ、おうちかえりゅでしょ?

夕刻。薄暗くなりはじめた部屋の椅子に腰かけていたウンスの膝を、よじ登るようにしてバンフがちょこんと向かい合いに座ってきた。

ちょうどウンスの胸のあたりにくる顔が、

大きな黒目でウンスを見上げている。

指をしゃぶりはじめた口元が動いて、

耳を澄ませれば音が聞こえてきそうだ。

子供って、こんなに可愛いものなのかしら?

子供を産んだ友達に、もっと聞いておくのだった。

育てるのはとても大変なのとか親になるってどんな感じなのとか。

ウンスの場合、まず産むことが一大事なのだが。

怖いな、ちょっと

いろいろなことが、怖い。

うんしゅ

え?

きょとんとした顔のバンフと目があって、我にかえった。

考えても仕方がない。いまは、この子だ。

うん、帰ろうね。疲れたでしょう?お昼寝もできなくって

ウンスがそう言って髪を撫でると、満面の笑みをかえしてくれる。

さて、と

ウンスが椅子から立ち上がろうとバンフの脇の下を持ち上げる。

けれどいっこうに動けない。

や、や

指しゃぶりをはずしたバンフが、ぎゅっとウンスの衿を握ってくるせいだ。

うんしゅのだっこがいい。だっこでゆく

おろされて歩かされるのを感じ取ったらしい。

カンの良さもあの男に似ているなんて。小さなチェヨンだ。

まったく、笑っちゃう

もちろん。ウンスもそのつもりよ

ほんと?

バンフが嬉しげに両足を揺らせると、

ぎゅっと衿を握っていた丸い拳に力を入れている。

うんしゅ、おうちいったらばんふとあしょぶ?ごはんたべりゅ?

食いしん坊さんね、まったく。こんなに食べてるのに体のお肉になる心配がないんだもの、羨ましいわ

うんしゅ、おにく?

バンフが小首を傾げはじめると

まずい、まずい

慌てた様にウンスが一歩、歩きはじめた。

いいの、いいの。考えなくっても。さて、帰ろう

ずしりとウンスの腕に、抱いているバンフの体の重みが伝わってくる。

バンフの絹の衣が滑るように腕に心地いい。

お祖父様、待っているわね、きっと

そうだ、きっと。

ウンスは一度思い切り息を吸いこむと、

自分を奮い立たせるように一気に吐き出した。

本屋敷の一室。

お早いご帰宅ですな、宗主。あの女子と話すより先に、私に言いたいことがおありのようだ

大父が格子扉の前で一人、佇んでいる。

その背中に組まれた両手が、一度ぴくりと指を動かすと止まった。

ヨンの気配に気づくあたり、やはり、傑人だ。

大父、なにをしている?

眺めていたのだ、この庭を。久しくじっくり、この目がみておらなんだ

そうしてまた、薄暗くなってきた庭を眺めている。

ヨンがまだ幼かった頃、大父が何度かこの屋敷を訪れ、

その度父の横に立つ己の髪を撫でてくれた。良き男になれ、そう言って。

ヨンの父が死んだあと、ときに向こう見ずで悪評があったヨンを、

誹そしる分家から庇ってくれていた。

恩情がある、この大父には。

大父

なんですかな?

大父がゆっくりと、ヨンへと体を向きかえた。

考えてみると、こうやって二人で話すのはほんとうに久しぶりだ。

父を亡くして俺の身が落ち着かなかったころ、やたら煩く噛みつく分家を大父が黙らせてくれた。自由に生きさせよと。感謝している。いままで礼も言っていなかった

おや、なんとの

大父が肩を揺らせながら、笑みをみせた。

宗主がそのような言葉を口になさるとは。ずいぶんと穏やかになられた

あの女人のことだが、

先刻か、使者がまいった。王命を賜ったのだ、このチェ家にの。あの女子おなごを本家の正夫人に迎えることになりそうだ

ヨンと目をあわせたまま、さきほどまで口元に浮かんでいた大父の笑みが消えた。

してやられた。そなたにな

大父!

puyonの呟き

こんばんは〜

GWのぐったりを引きずっているpuyonです笑

前回コメントくださったみなさんありがとうね(/)

puyonは頑張りました〜!

気分転換で、puyonはこの頃スキマ時間、歩いているの。

ちっちゃなお花が咲いていたり、空気がほどよく気持ちがいいって思う